こんな店が凄いだなんて思いもしないけど素晴らしい、幡ヶ谷の孤高のいわし料理屋。
3月のある真夜中に上の写真のような、いわしを食べさせるのである。
それだけで、この店の凄さがわかろうというものだ。
いわしのシーズンは6月頃とされる。
しかし、この店は年中シーズンなのではないかと思わせるだけの鮮度と旨さがある。
幡ヶ谷駅から甲州街道を道の左側を笹塚方面へ歩くと、陸橋があり、その先の雑居ビルの1階にこの店はある。
その名も「いわしや」。
正直、いわしを売りにしている店は多いし、それどころか「いわしや」という名前の店は、日本中に何軒あるのだろうか?ちょっとした街には当たり前のようにありそうな、まるで捻りのない店名だ。
しかし、こと幡ヶ谷のこの「いわしや」は「いわしや」としか名乗りようのないほど、いわし愛に溢れている店である。
甲州街道沿いの1階にあるそのドアを開けると、鰻の寝床(というにはちょっと短いが…)のような細長い店が目の前に表れる。
手前がカウンター席、奥がテーブル席の小さな店だ。
カウンターの上には当たり前のように冷蔵ケースが置かれ、その横には焼酎の瓶が並ぶ。見た目もまったく期待の持てない、普通の居酒屋だ。
メニューは、いわし料理の他にも様々な魚料理があって、それをご主人が一人で作り、一人でサービスまでする。(早い時間は違うが、大体伺うのは夜中なので…)
いわしの料理もいろいろあるのだが、よく見ると、なかなか細分化されていることがわかる。
刺身と薄造り、天ぷらと大葉を巻いた天ぷら(磯辺香り揚げという名前らしい)、さんがに生さんが(とメニューに書きながらオヤジは「なめろう」と言って持ってくるw)など、様々な、でも小手先のアイデア系ではなく、定番を突き詰めたいわし料理がいただける。
薄いのに旨味の強い、薄造り。
頭からかぶりついてもはかなく消えて行く塩焼き。
写真のような鋭くエッジの立った刺身。
どうやってここまでふんわりと揚げているのか、不思議な感覚となる磯辺香り揚げ。
〆には、いわしの全てが味わえるつみれ汁(それだけのこともあり650円もするww)。
人数が揃えば、鍋もいい。
か弱き「鰯」を赤子に触れるかのように丁寧に扱い、
その旨味全てを生かし切った料理であるということは、誰が食べてもわかるだろう。
また、この店では1年ちょっと前からヴァンナチュールも置きはじめた。
オヤジはワインのことはわからないからと、行きつけのインポーター数社のワインが代わる代わるラインアップされている。
この日飲んだドメーヌ・ド・ヴェイユーのシュヴェルニー・ブランはまさに
いわしとマリアージュするワイン。
もしかしたら、口の中が生ゴミみたいになったらイヤだなと思ったのであるが、
そんな不安は杞憂に終わった。
それどころか、いわしをキレイに流してくれた。
けっして高価なワインではないのだが、十分に役目を果たした。
もちろん、いわしの鮮度のこともあるが、こういうワインがあれば日本酒がなくてもいいと思えたほどであった。
誰もが名店というほどの格もないし、雑然とした居酒屋であるが、近くにあれば本当に嬉しい、日常の名店とでも言えるのではないかと思う。
いわしや
住所 東京都渋谷区幡ヶ谷1-6-5 コーエイマンション1F
電話番号 03-3918-3462
営業時間 18:30~5:00(LO4:00) 土18:30~1:00(LO0:00)
定休日 日曜日(および土曜不定休)